ベルギー通信

ベルギービールとチョコレートをすっかり満喫中の有村です。渡部先生はじめ諸先生方のご指導の甲斐あって、ポスドクとしてIMECに来ることができました。今回、こちらでIMECおよびベルギー情報を紹介することで、少しでも後進の役に立つことができればと思っています。

IMEC
IMECはエレクトロニクスの分野では世界的に有名な研究機関です。ルーヴェン市の中心部から南西に約2 kmのところに位置し、Katholieke Universiteit Leuven (K.U.Leuven)という大学とも隣接しています。IMECはnonprofit organizationというわけで、自ら製品を作って売るということはしませんが、世界中の半導体メーカーと提携を組み、企業からの研究者・技術者を受け入れ、研究施設や研究成果を共有することで提携企業からお金を貰っています。研究者・技術者の国籍はさまざまで、まさに多国籍軍です。この点が非常に面白く、私がIMECに魅力を感じた理由の一つでもあります。ちなみに、日本人の方もIMECには30人以上いらっしゃいます。建物は緑に囲まれており、森の中で研究しているようです。こちらは初出勤日に撮った正面玄関前の案内板。



IMECは建屋がIMEC1, 2, 3, 4と4棟あるのですが、現在IMEC5を建設中です。従業員数は現段階で2,000人近くおり、IMEC5が完成すればさらに1,000人程度従業員を増やすそうです。実はYoutubeにIMEC関連の動画がたくさん転がっていますので、以下にその一部を紹介します。


(画像は下記Youtube動画より)
http://www.youtube.com/watch?NR=1&v=VzO5oK0nTx8
こちらはIMECの全体像とIMEC5の完成イメージです。こんな歪な形をしていて、もし地震が起きたら大丈夫なのかなと心配するのは私だけでしょうか?一応、ベルギーで大きな地震は起こったことが無いようなので一安心です。


(こちらも下記Youtube動画より)
http://www.youtube.com/watch?NR=1&v=ttD7JOwpNXo
こちらは300mmウエハ用のクリーンルーム。450mmにも対応可能だそうです。いまだにビニールの外から覗いたことしかありません。




こちらはIMECの描く2025年像です。これは一見の価値ありです。ここまで電子機器に依存したハイテク社会が本当に良いのか、賛否両論あるかとは思います。ただ、持続可能なエネルギーに基づいた社会の構築は理想なのではないでしょうか。原発の是非が問われている昨今、化石燃料が尽きる前に何としてもそういった社会を構築しなければなりません!!

勤務時間
出勤時間、帰宅時間は基本的に自由です。ミーティング等がなければ、極端な話何時に来て何時に帰っても構いません。さらに、例えば個人的な用事で遅れて出勤するとしても、特に上司に連絡しなければならないというルールも無いようです。周りの研究者は大抵朝9時頃に来て夕方6時頃帰るといった感じで、渡部研の名ばかりのコアタイムとあまり変わらない気がします。ということで、最近夕方6時頃になると「そろそろ帰る時間だ!」と思うようになりました。
こちらでは仕事と家庭の優先順位があくまで家庭>>仕事です。よって、極端な例ですが、例えば幼稚園に子供を迎えに行かないといけない場合16:00頃帰っても何も問題ありません。一見すると、あまり仕事をしていないのではないかと思ってしまいます。しかし、そんな風にしていても、やはりやるべき仕事はきちんとこなしています。個人的な印象ですが、基本的にこちらの人は仕事が速いです(自分が遅いだけという説も有力ですが・・・)。日本の大学等のように雑用をする必要が無いのも、早く帰れる理由の一つかもしれません。

分業制
こちらのシステムは役割分担がはっきりしています。特にこれまでいた阪大と異なるのは、測定装置等を管理するスタッフが豊富で管理体制が確立されている点や、PC関係を管理するチームがある点です。これは非常に助かります。渡部研ではしばしば、雑用研究で忙しいにも関わらず、測定装置の立ち上げ、メンテナンス、消耗部品の交換等で走り回っていた某助教を見ていただけに、このシステムの重要性が良く分かります。

通勤手段
IMECへの通勤手段は主に車、バス、自転車、徒歩の4種類が挙げられます。車は言うまでもありませんが、バスの場合IMECの敷地前にすぐバス停がありますのでとても便利ですし、自転車はIMECが推奨している通勤手段である上、趣味・スポーツとしてもこちらでは人気が高いため、自転車通勤者も多いです。徒歩に関しても、IMECはルーヴェンの中心地から徒歩30分圏内にありますし、ルーヴェン大学の壮大な建物を眺めながら緑溢れる遊歩道を通って通勤できるというメリットもあります。ちなみに私は毎日バスを利用しており、運動不足もいいところです。こちらはルーヴェン大学の象徴的な建物、アーレンベルグ城と緑に囲まれた遊歩道。









英語
IMECでの標準語はもちろん英語です。分かってはいたものの、やはり苦労しています。しばしばめちゃくちゃな英語を喋っている気がします。いえ、喋っています。ただ、こちらの方は皆さん我慢強く聞いて下さるので、何とかやっていけています。こちらに来て、スペイン人とイタリア人の話す英語は比較的訛りが強いということを知りました。スペイン語は基本的にローマ字読みするそうなので、英語の発音がローマ字読みに近くなっています。また、イタリア人の英語は”r”の舌の巻き方が強烈過ぎて、なかなか聞きとるのが難しいです。ただ、全く文句を言える立場ではないのですが・・・。


食堂
IMECの食堂はなかなか美味しいです。日替わりの肉・魚料理やパスタ等がメインとしてあり、これらの皿の空きスペースに主食であるポテトやその他じゃがいも料理、さらにサラダ等を好きなだけ盛ることができます。それでいて値段は4€台です。メインの肉料理にはベルギーならではのうさぎのシチューなんかもよく登場します。1€台で買えるサンドイッチ等もあるため、実験が忙しい時や簡単に食事を済ませたい時はそちらで済ませています。


生活の立ち上げ
こちらに来てまず最初のミッションはアパートを見つけることでした。事前に安ホテルを1週間のみ予約しておき、この1週間の間に住むアパートを必死で探しました。私の場合、正式にはIMECのポスドクではなくルーヴェン大学のポスドクという形になっているため、IMECのサポートは受けることができず、代わりにルーヴェン大学のハウジングサービスを紹介してもらいました。ただ、私が渡欧したのは8月末であり、9月から新年度が始まるこちらでは既に多くのアパートが契約済みという状態でした。さらに、最短の場合2年でベルギーを去るかもしれないことを考慮して“家具付き”という条件で探していたため、アパート探しはそう容易ではありませんでした。結局不動産屋を巡り、インターネット上でも散々探した結果、何とか当初の1週間内にアパートを契約することができ、ようやく一安心することができました。
ただ、アパート入居日はなんと、前の住人がろくに掃除もせずに出て行ったまさにそのままの部屋に入らなければならないという予想外の展開。翌日、大家さんが雇った掃除婦さんが一人来て部屋の掃除をしてくれましたが、日本のように清掃業者がきれいにしてくれるわけでもなく、掃除婦さんが掃除し忘れた引き出し、前の住人が残していきそのまま放置された食器類など、依然気になる点が多々ある状態でした。海外に出ると、日本の仕事の質の高さが本当によく分かります。
住むアパートが決まり、住所が確定してから初めて市庁舎で住民登録の申請ができます。しかしまたこの市庁舎の職員さんが、皆さん大変マイペースでした。大勢の人が窓口の前で待っているにも関わらず、窓口を離れコーヒーを入れに行き、休憩後にコーヒーと共に戻ってきます。日本では考えられない光景でしたが、誰も文句を言う人はいません。これは渡欧して間もない私にとってはカルチャーショックでした。市庁舎での外国人の住民登録は複数の段階を踏み、IDカードが貰えるまで通常3カ月程度かかります。初めの申請後は、実際その住所に申請者が住んでいるかを確認するため、警察が抜き打ちでアパートを訪ねてきます。この確認後、数週間してから市庁舎から届く招待状と証明写真等を持って再び市庁舎を訪れます。ここで問題なく申請できればIDカードを受け取るためにさらにもう一度市庁舎を訪れ、晴れて住民IDカードを手に入れられるわけです。日本人のIMEC赴任者の中には、IDカードを取得するのに半年以上かかった方もいるようです。そして私も、申請してから優に3カ月は過ぎましたが、未だに取得できておりません。年を越しそうな予感がプンプンします。
その他生活の立ち上げ関連では、銀行口座の開設や健康保険の契約等を行いました。こちらの方は日本と違い、結婚しても奥さんの名字が変わるということはありません。よって、何かの手続き時に契約書等に結婚後の名字を書き、一見旧姓のままのパスポートを見せると、名字が違うじゃないかということで手続き上の問題が生じます。私の場合、この問題のせいで作ったばかりの銀行カードが3週間も使用不可となり、あわや手持ちの現金が底を突くところでした。


と、生活の立ち上げ情報がいつのまにか愚痴っぽくなってきましたので、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。それでは、良いお年を。

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